第208話 成績を上げる意外な方法 その59

 結がコンビニの中へ入った瞬間、レジ側の奥から京川が出てきた。怒りの形相の京川は、叫び声を上げながら手に持った参考書で作高へ殴りかかった!

 それを見て、結は咄嗟に作高を庇ったのだ。もし京川が怪我をさせてしまったら、京川にとって不利な事になってしまうから。

 作高へと振り下ろした参考書が、結の鞄に当たったと気づいた瞬間、京川から怒りは消えた。

 さらに結が怪我していなかったと知った後、ホッとしたから、体の力が抜けて倒れそうになったのだ。

 いきなり現れた結に、作高は礼を言うより疑問の声を出したが、結はそれに対し「京川さん達を助けるためです」と答えたのだ。


「霧島さんに話したんだ…」

 レジの中側に居た酒井の隣で、京川は呟いた。

「ごめんね京川さん。霧島さんからの話を聞いた時、私達を助けてくれるって思ったの…」

 結は真相を知っても咎めたりせず、作高からの脅迫や嫌がらせを止めるために協力すると宣言してくれたのだ。誰にも言えずに悩んでいた酒井にとって、結は救いの手を差し伸べてくれた。

「…霧島さんは、学校でも私を助けてくれたから」

 そう言った京川の顔には、自然と安心した笑みが浮かんでいた。

(京川さんが、笑っている…!)

 初めて会った時から、辛い顔しか見せてなかった京川を見て、酒井は結の事を信用できる人だと思った。

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