第201話 成績を上げる意外な方法 その52

 親からの重圧に、京川は悩んでいた。そして、初対面なのに、真剣に心配してくれる同じ年の女の子が塾に行きたがっていると知って、ふとこう思った。

「あなたが行ければいいのに…」

 そうすれば、その間休める、と思ってしまった。

「…じゃあ、こうしよう。私があなたの代わりに塾へ行くの」

「―!?」

 その提案に、京川は頭の中のすべての気持ちが吹っ飛んだ! 

「同じ年ぐらいだし、背格好も体格も似てるから、顔を隠せば知り合いがいない限り簡単にバレないと思うよ」

 今、京川は地味なトレーナーに黒い色のロングスカートという私服だ。靴も何の飾りのないシンプルな形をしている。

 酒井はまだコンビニの制服に着替えておらず、私服のままだ。こちらは黒のパーカーにこげ茶色のロングスカートという似たような恰好だ。

「…で、でも」

 もしバレてしまったら、もっと大変な事になる。京川はそれに怯えていたが、

「あなたの健康の方が大事。そうでもしなければ、いつかあなたも倒れて入院しなければならなくなるよ。私は、そうなってほしくないの」

―もし倒れて入院してしまったら、もっと迷惑が掛かる。

 それが京川の心を揺さぶった。もし入院してしまったら、親は心配するどころか、ますます「勉強が遅れる」と叱るかもしれない。

「…お願いします」

 京川は、その提案に協力することにした。

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