第199話 成績を上げる意外な方法 その㊿

 コンビニの店員の女の子―酒井舞花が京川と出会ったのは中間テストが終わった日の夕方だった。

 親戚が経営しているコンビニへ行く途中で、その近くにあった学遊塾の前で倒れそうになった京川を見かけたのだ。

 京川の体が倒れる前に何とか受け止められた酒井は、そのまま呼びかけても反応しなかった京川が心配だったため、そのままコンビニへと連れて行った。

 レジをしていた店長である伯父へ事情を話した後、酒井は従業員が休憩する部屋で京川を休ませた。その時はまだ京川の意識は戻ってなかったため、京川の両親へ連

絡をするために鞄の中を見させてもらった。

 学遊塾の申し込みの書類を見た酒井は、思わず「いいなあ」と呟いてしまった。今、塾へ行きたくても家にお金がないから行くことができないから。

「…う」

 京川が起き始めたので、慌てて鞄を元の位置へ戻す。

「気が、付いた?」

 酒井の呼びかけに、京川は周りを見回す。

「ここは…?」

「学遊塾の近くのコンビニの中。あなたが倒れそうだったから、休ませるためにここまで連れてきたんだよ」

 京川はまだぼんやりとした顔だったが、酒井からの説明を聞いて、立ち上がろうとした。

「…塾、行かなきゃ」

「えっ!?まだ休んだ方がいいよ!」

「でも、行かないと…、また怒られちゃう」

 悲痛な声を出した京川を引き留めようと、酒井は京川の両肩を掴む。だが、京川は怒られるのが怖い、という思いで頭がいっぱいだった。

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