第198話 成績を上げる意外な方法 その㊾

「貴女は、昨日コンビニでお会いした店員さんですか?」

 ちょっと聞いてもよろしいですか?という感じで、結は質問する。

「…!?」

 俯いたまま、何も答えなかった。まさかバレてしまうとは思わなかったからだ。

「私は、貴女も京川さんも責めるつもりは一切ないです。もしお望みなら、この事は誰にも言いません」

 本来行かなければならない塾をサボるどころか、他人に代わりに行ってもらっている。それを知ったらたいてい咎めれられるのに、結は黙ってくれるというのだ。

「…何が、目当てですか?」

 ようやく聞き取れるほどの小さな声だった。結はそれを聞き逃さずに、『助けたい』という気持ちを伝える。

「京川さんが、作高さんに嫌がらせをされています」

「―!?」

 昨日、自分を脅してきた作高が京川まで嫌がらせをしてきたと知って、顔を上げた。

 フードの下の顔は、確かにコンビニの店員の女の子だ。

 これで結にはっきりとバレてしまったが、なぜか慌てて顔を隠そうという気にならなかった。

「昨日の件で、貴女も作高さんから脅されていました。困るのは貴女だけではない、という事はもしかしたら京川さんにも関係があるかもしれません」

 結の推測に、コンビニの店員の女の子は少し下を向いた。京川に対し、申し訳ないと言いたそうな顔だ。

「もしよろしければ、話してくれませんか?私は、貴女が作高さんから脅されているの見てますから、同じように貴女への嫌がらせも止めさせたいのです」

 目の前の、同い年の女の子は、京川だけでなく自分も助けたいと思っている。塾をサボる手伝いをした、と知っているにも関わず。

 結に対し、今度は『京川』ではなく、本来の自分の口から事情を話そうと思い始めた。

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