第193話 成績を上げる意外な方法 その㊹

 その日の夕方、遊学塾に京川は居た。

 初級クラスに居る京川は誰とも話さず、真面目に塾の授業をノートに取っている。

 黒い上着のフードを深く被り、黒板を見る時もあまり顔を上げなかった。まるで、他の人達に見られないように。

 やがて塾が終り、受付を通った京川は玄関を出る。

 数歩歩いて、ようやく息を吐きだした。今までの緊張していた全身を緩めるように。

「京川さん」

 後ろから、急に声をかけられ声を出しそうになった。後ろを振り向くと、前にこの塾で会った少女が立っていたのだ。

「…お話があるのですが、よろしいでしょうか?」

 静かに話しかけてきた結に、京川は戸惑った。

「あの、私は貴女を心配しているのです」

 結から出た言葉に、京川はさらに驚く。なぜ、他人なのに、心配してくれるのか?

「このままだと、貴女は病気になって倒れてしまいます。私も、学校の先生達も、貴女を助けたいのです」

 学校の先生達も、京川を助けたいと思っている。これを聞いた京川は、心配してくれる大人が居たんだ、と思った。

「私に、話してくれませんか?もしかしたら、力になれるかもしれません」

 本気で心配し、助けようとしてくれている結を見て、本当の事を話すべきか、京川は迷い始めた。

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