第191話 成績を上げる意外な方法 その㊷

「もし、ご両親の都合がいい日が分かったら教えてね」

 自分の事を心配してくれる夏風先生の言葉に、京川は泣きそうになった。

「はい…」

 それに気づいた作高はまたイジろうとしたが、結からの厳しい視線を感じ取ったのか、苦々しい顔で黙ったのだった。



 結達が職員室から出た時、お昼休みは三分の二を過ぎていた。

 京川は結へ頭を下げると、その場から離れる。図書室に置いたままの参考書などを取りに行くためだろう。

「…邪魔すんじゃないわよ!」

 職員室のドアを閉めるなり、作高は反省していないと分かる言葉を吐き捨てた。こちらが被害者なのに、どうしてちょっとイジっていたことを注意されなければならないのか。

「…作高さん、もしこれ以上京川さんに絡むのなら、昨日のコンビニでの出来事を夏風先生へお話しします」

「―!?」

 結から出た、警告とも言える言葉に作高は動揺した。

「なっ…!?脅す気!?」

「先ほど、夏風先生が京川さんへの悪質なイジりを止めるように注意しましたにもかかわらず、貴女はなぜそう言われたのかまだご理解できてないようです。私はこれ以上京川さんが辛い目に遭わないように、苦渋の決断をさせていただきます」

 もし結がコンビニでの出来事を喋ってしまったら、親に伝わってしまう。そうなったら、今までどおり家で可愛がられて、ずうっと楽にゴロゴロできる生活がなくな

ってしまうのだ。 

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