第184話 成績を上げる意外な方法 その㉟
「どういたしまして。それで、これを買いたいのですが」
ずっと左手で持っていたプリンを、結はそっと差し出す。それを見た男性店員が、気づいた顔でレジへ向かったのだ。
「…すみません。お礼として代金はこちらでお支払いします」
「いえいえ、私はお礼目当てで口を出したわけではないので、代金は払わせてください」
丁重にお断りをした結へ、男性店員はさらに頭を下げる。隣で立ったままの店員の少女も、頭を再び下げた。
「ありがとうございました!」
男性店員からレシートを受け取り、結はプリンだけ受け取った。軽く会釈した結は二人の店員に見送られ、コンビニのドアへと歩き出した。
「…ごめんなさい伯父さん、迷惑をかけて…」
「いや、いいんだ。すぐに駆け付けられなくて、すまなかった…」
店員の少女は、まだ声まで震えていた。それを身内らしい男性店員が慰めている。
(…作高さんが、周りを見ずに横断歩道を渡っていたのが気になって思わずコンビニに入ってしまいましたが、正解でしたね)
結が作高を追いかけたのは、歩きスマホをしていたからだ。スマホに夢中になってもし目の前で事故に巻き込まれた大変な事になる、と思い、作高へ声をかけようと
したのだ。
作高は相変わらず結へ悪口を言ってきたが、結は受け流していた。それよりも、店員の少女を救う方が結にとって大事だったのだ。
もし、作高の後を追わなければ、あの少女を助けられなかった。結はすぐに作高の後を追って良かった、と心から思ったのだ。
(まあ、今回は諦めてくれたため言いませんが、もしまた似たようなことをしたら、仕方ありませんね…)
上着のポケットから自分のスマホを取り出した結は、データを確認すると、手帳型であるスマホのカバーを閉めた。
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