第182話 成績を上げる意外な方法 その㉝

「―!?」

 結に一部始終を見られていた、と知って作高は激高する。 

「作高さん、たとえ友達でも、こんな高い物を無理やり買わせるのはさすがに良くない、と思います。それに、アルバイト代替わりに店の品物がもらえるとは思いませんが」

「はあ!?」

 はっきりと言い切った結の言葉に、作高逆ギレしそうになる。

 店員の少女は、ますますおろおろしていた。このままではお客さんである結が、作高に理不尽な怒りをぶつけられてしまう。

「どうしたのですか!?」

 レジの奥のドアが開き、四十代後半の男性が慌てて出てきた。眼鏡をかけた、や白髪が混ざった黒髪のコンビニの制服を着ているその男性は、先ほどからのレジで

のただならぬ雰囲気に事情を聞いてくる。

「こちらの方が、友人だからと言って、このコスメ全部を買うように強要してきたんです」

 すかさず結が、店員の少女を庇うように説明した。

「本当なのか?」

 なるべく落ち着いた声で、男性店員は少女へ確認する。

 少女は困った顔で、何も言わなかった。だが、小さく頷いたのだ。

「お客様、申し訳ないけど、うちは店の中で、従業員が代わりに品物のお金を払う事は禁止されているんです。それに、友人だからって、欲しい物を無理やり買わせるのは、さすがにどうかと思いますが…」

 男性は作高をなだめるように、ゆっくりと説明する。

「……」

 さすがに相手が年上の男性だということから、作高はいきなり逆ギレはしなかった。

 だが、作高の顔は不機嫌なままだ。邪魔をされた、と怒鳴りたいくらいに。

「作高さん、もしこれ以上店員さんを困らせるのなら、警察に通報します」

「―!?」

 結からの思わぬ宣言に、店員達も声が出ないほど驚いた。

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