　夕日はほぼ沈み、幸坂坊の街灯の明かりが燈り始めた。

　遊学塾のビルの一室の明かりが消え、自習を終えた生徒達が次々と出てくる。結も、その一人だった。

（京川さん、居ませんでしたね）

　今日は、遊学塾の自主学習の日だ。生徒達が都合のいい時間に来て、一階の自習室でそれぞれやりたい教科の勉強をする。これは自由参加なので、いつもより生徒は少なかったが。

　とはいえ、来なかった生徒は遊んでいるのではなく、スマホやタブレットを使って家で学習しているのだ。

　塾に来た方が、先生から直接教えてもらえるし集中できる。そうしたい生徒達のために、一階の自習室を開放していた。

　結が今日わざわざ塾へ来たのは、京川が来ているのか確かめるためだ。昨日、学校で保健室の先生から絶対に休ませるように言われていたのに、無理やり塾へ行かせ

らてれいた。なら、自主学習の日である今日も、塾へ行くように言われているはずだ。

　しかし、自習室には京川の姿はなかった。遅れてくるのかと思い最後まで自主室にいたが、終了時間が告げられるまで、京川は塾へ来なかったのだ。

（もしかしたら、休まれたのかもしれませんね）

　昨日倒れたのに、無理やり塾へ行かされたことにより体調を崩して家で倒れてしまった。結はそう推測した。

「あれは…」

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