第177話 成績を上げる意外な方法 その㉘

「鳥山さん、田川さん私はここらで失礼します」

 結は一礼をすると、一組の教室へと戻っていった。

 廊下へと歩いて行った結を見送った鳥山は、再び京川の方を向く。京川は問題集のページをめくって、シャープペンシルを握ったまま考え込んでいた。

(きっと霧島さんは、京川さんを何とかしたいと思っているだろうなあ)

 よく京川を見てみると、寝不足でやつれていた。しかも昨日図書室で倒れた、となれば心身共に疲れているだろう。

 それなのに、親は強制的に勉強させている。このままでは、京川はいずれ病気になってしまうというのに。

(昨日、霧島さんが助けたのなら、京川さんの今の状況を何とかしたい、と思うはずだ。霧島さんは、苦しんでいる人を見捨てようとしないから) 

 田川は、真剣に考えこむ鳥山の横顔を見て、その表情のカッコよさに見とれると同時に、もし何かあったら手を貸そう、と思っていた。


 自席に座っていた作高は、イライラしながらスマホの画面を見ていた。

 先ほど、鳥山から厳しく注意されたのもあるが、急に周りが京川の味方になったのが面白くなかったからだ。

 そのきっかけとなったのが、結と華だ。特に華のせいで同級生達の注目を浴びれなくなったのが、作高の不機嫌の原因だったのだ。

 濃い化粧しなくても、華は人目を引く容姿をしている。そのため、華に会う前まで容姿を褒めてくれていた同級生から「作高さんって、厚化粧だよね」と比べられてし

まったのも、面白くなかった。 

(…成宮のヤツ!お嬢様だからって自慢して!)

 自慢のメイクを褒められなくなったことも、作高を苛立たせていた。

(リップだけじゃだめ!全種類揃えないと!)

 一昨日発売された最新のコスメの情報を見て、作高は真剣な顔で値段を調べる。

(…やっぱ高い!さすがに全部買ってくれないだろうなあ…)

 お小遣いではまったく足りず、かと言って親にねだっても全部は無理、という現実を痛感するしかなかった。

(…そうだ!)

 スマホから顔を上げた作高は、何かいいことを思いついた!という表情になった。

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