第176話 成績を上げる意外な方法 その㉗

「クラスメイトとして、当然な事をしただけだよ」

 爽やかな笑顔を浮かべた鳥山に、結以外の女子は見とれてしまった。

「…!」

 京川も、つい見とれてしまった。それに気づくと真っ赤な顔で恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまう。

「わ、私はこれで失礼します!」 

 慌てて自席へ戻っていった京川を、結と鳥山と田川は穏やかに見送った。

「あ、あの…!」

 入れ替わるように、別の女生徒が鳥山へと近づいて来る。何か、大事な話がある、という顔だ。

「どうしたんだい?」

「私、京川さんと同じ中学出身なの。クラスも同じだったんだよ」

 鳥山と話す機会を作るためか、京川の話題を持ち出してきた。

「京川さんとは、中二の時に同じクラスだったの。その時、夏ごろから急に京川さんは親からやたらと『勉強しろ!』と言われるようになったみたい」

 その内容に、結も耳を傾ける。

「毎日のように、三つも別々の塾へ行かされるようになって、友達と遊べなくなってしまったの。中三にもなると、深夜まで勉強させられていたって噂が流れていたし」

 高校に入学する前から、毎日勉強させられていたと知って田川も驚いていた。

「親は『礼彩学園』へ行かせたかったらしいけど、落ちてしまったから仕方なくこの高校へ行くのを認めたって聞いたよ。家から一番近いから、通学に便利だ、って」

 通学時間が短いから、その分勉強時間を取れる。おそらく、京川の両親はそう考えたのだろう。 

「…そうだったんだ」

 初めて聞く京川の事情に、鳥山は「話してくれて、ありがとう」と感謝した。

「どういたしまして!」

 ようやく鳥山と会話できた事に、女生徒は嬉しさを隠せない口調だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る