第171話 成績を上げる意外な方法 その㉒

「まあ、平気で悪口を言うヤツが、成宮さんに勝てるわけないよな」

 流の言う通り、華と作高では、華の方が勝てる要素が多い。

 華には財力だけでなく、美貌も頭の良さも人望もある。

 化粧しなくても人目を惹くほど美しい容姿をしているし、それを鼻にかけたことはない。

 さらに正反対な容姿の結を見下すことなく、侮辱されたら本気で怒ったのだ。これで、華の方が何倍も人として上だという事が周りに伝わっただろう。

 頭に血が上っていた作高だが、徐々に気づき始めた。周りからの視線が、厳しさと冷たさを帯びていたことに。

「もう、京川さんへ嫌がらせをするのは止めるんだ。そして、霧島さんへ酷い事を言った事に、謝罪を」

 同じく厳しい声で、鳥山からも言われ、作高は納得いかない顔のまま「悪かったわよ…」と言い捨てた。

「何!?それ!」

 華が抗議しようとしたが、結が止める。

「私は、もう京川さんへ嫌がらせをしなければそれでいいです」

 冷静にそう言った結を見て、作高は「…ムカツク」と小声で吐き捨てると、自席へ向かった。


 作高が座った後、結達は一礼をして一組の教室へ戻った。

 そろそろ朝のHRが始まるからだ。それで結は休み時間に改めて聞くことにした。

 華が結を庇ったことはもう一組にも知れ渡っており、同級生達は華へ賞賛した。しかし根室は、教室の自席に座ったまま、特に何も言わなかったが。 

 結は華の隣に居た時いろいろと聞かれたが、京川の事は「同じ塾に通っていると耳にしたので、ちょっと気になったからです」と答えた。昨日、京川が倒れたことは

華にも話してなかったのだ。

 もう少し、京川から直接話が聞きたい。そう判断した結はあまり大事にしないためにも、こちらから言わない方がいい、と決めていた。

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