第167話 成績を上げる意外な方法 その⑱

「別にここでもい~でしょ!?っていうか、なんでこいつと話がしたい訳!?」

 どうやらこの女生徒は、結と京川を二人きりにさせたくないらしい。そう判断した結は、そのままここで話をすることにした。

「昨日、遊学塾で京川さんをお見掛けしたのですが」

「そうそ~う!こいつは授業以外でも勉強しているクセに、頭悪いんだよ~!それで前の塾を辞めさせられのに今度は遊学塾に通ってんだよ!」

 女生徒はすごく感じ悪い口調で、さらに京川を馬鹿にし始めた。それを聞いた京川は、悔しさと恥ずかしさで俯いてしまったのだ。

「どうしてそんな事を言うのですか?」

 結のストレートな質問に、女生徒は一瞬口の動きが止まった。

「…は?」

 口をあんぐりさせながら、結の方へ顔を向けた。

「なぜ、貴女は京川さんへそんな事を言うのですか?とお聞きしたのですが…」

 真剣な顔で聞いてきた結へ、先ほどまでの馬鹿にした言動は一切言えなくなってしまった。

「…こいつ、頭が悪いからよ。前の塾のテストで五十点ぐらいしか取れなかったから」

「では、貴女のそのテストの点数は何点でしたか?」

「七十点ぐらいだけど!」

 女生徒は逆ギレした顔で、そう答える。それに対し、結は(珍しく)余裕の微笑みを浮かべて言いきった。

「私、遊学塾のテストはいつも百点です」

「―!?」

 遊学塾の方がレベルが高い、と思っていた女生徒は結のテストの点数に言葉を失うほど驚いた。

「貴方はテストの点数が高いから、京川さんへ酷い事を言ってもいい、と思ってらっしゃるみたいですね?」

 少し強い口調の結の言葉には、微かに怒りが含まれて いた。

「それは間違いです。テストの点数は塾や学校の勉強を どれくらい理解してるか、という目安なんです。テストの点数だけで、その人の価値が決まるわけではありませ

ん」

 凛とした結の意見に、女生徒は何も言い返せなかった。

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