第166話 成績を上げる意外な方法 その⑰

 次の日、登校した結は鞄を机に置くと、すぐ隣の二組の教室へと向かった。

 二組の教室には、すでに半数以上の生徒達が登校済みだ。自席に座ってスマホを見たり、友人とお喋りしている生徒が多い。

「京川さ~ん!遊学塾へ行ってるんだって~!?」

 わざと周りに聞こえるように、大きな声が結の耳に入ってきた。その声がした方へ目を向けると、教室の窓側の席に座ってた京川が、別の女学生に絡まれていたのが見えた。

「…」

 京川はその女生徒に返事をせず、ひたすら問題集に集中しようとする。だが、そんな反応を見た女生徒は、ますます絡んでくるようになったのだ。

「前の塾で落ちこぼれだったのに、遊学塾へ行っても大丈~夫?」

 ただならぬ様子に、結は一礼して二組の教室へ入って行く。結に気づいた他の生徒達が注目する中、結は京川の傍まで近づいてきた。

「京川さん、おはようございます」

 朝の挨拶をしながら、結は軽く会釈をした。

「…!え、ええっと!?」

 別の声がしたから顔を上げたら、昨日助けてくれた人が居た。それでびっくりした京川は、しろどもどろとなってしまったのだ。

「驚かせてすみません。ちょっと、お聞きしたいことがありましたので」

 絡んでいた女学生も、突然現れた結に思わずポカンとなる。だが、すぐに結を見て、うっとおしいそうに睨みつけてきたのだ。

「…何?アンタ?」

「私は京川さんとお話ししたいので、少しよろしいでしょうか?」

 そんな嫌な視線を受け止めても、結は冷静にそう声をかけた。たとえこの女生徒が京川に嫌がらせをしていたとしても、一応断りを入れておこうとしたのだ。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る