「二組の田川さんに相談したら、引き受けてくれました」

　田川とは、前にある事件で知り合った女生徒だ。結がダメ元で相談したら、意外にもあっさり引き受けてくれたのだ。

　ちなみにその理由は、結のおかげで前から気になっていた男子生徒を話せる機会が出来たからだ。田川にとって『禍転じて福となす』と言ったところである。

「…そう…なの？」

　まさか一度も話したことがない同級生が引き受けてくれるとは、夢にも思わなかった。

「それでノートの内容を、職員室でコピーさせてもらいました。田川さんはもう帰られたので、お礼を言うのは明日でいいですよ」

　田川を見送った後に結は保健室へ向かったので、それは確かな情報だった。

「…すみません」

　ゆっくりと差し出されたコピー用紙をその女生徒は申し訳なく受け取った。

「いえいえ、お気になさらないでください。京川さん」

　結は、その女生徒の名を呼んだ。

「………」

　京川は、この高校に来て初めて名前を呼ばれた気がした。今まで、休み時間も勉強ばかりで、同級生と話す時間すらなかったから。

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