第153話 成績を上げる意外な方法 その④
なお、県内一の名門女学校である撫子女学院の中等部にいた華がここの高校へ来たのは、結を心配したからだった。小学校の時のいじめが原因で周りに心を閉ざしがちな結をフォローしよう、と思ったからだ。
孤立しがちな結をよくお昼に誘うのも、結がみんなと仲良くできるようにするためである。だが、今でも結は休み時間は一人で本を読んでいることが多い。
それでも話しかければ、きちんと対応してくれる。前に余計な事をしてしまったことから、華は先に結の良いところを周りに教えておこう、としているのだ。
「それで霧島は、この学校に来たのか…」
初めて聞く結の進学理由に、流は驚いた顔で呟いた。
結と華とは離れた、自席で座っていた流の向かい側で椅子に腰をかけていた満にも、華の話し声は耳に入っていた。
「確かに、この高校は行きやすいもんな」
どんな生徒でも、楽しく学校生活が送れるようにする。
入学案内に書いてあった言葉の通りだった、と満は中間テストが終わった後も実感していた。
進学科だからといって、無理やり勉強をさせる雰囲気など一切なく、まずは自由に楽しく学校生活を送ってほしい。この教室だけでなく、この学校には、そんな空気
があちこちに漂っていたのだ。
だが、そんな空気が漂っていても、時にはトラブルが発生してしまう。しかしこの学校の先生達は『どんなトラブルがあっても、決して生徒達を見捨てない』という強い意志を持っていた。
(…この学校に入れたのは、本当に流のおかげだな…)
塾へ行っていない自分へ根気よく勉強を教えてくれた親友へ、満は改めて心の中で感謝した。
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