第152話 成績を上げる意外な方法 その③
明るい顔でどんどん話してくる華に対し、結は自分の事はめったに話さない。なので、結はテストで満点を取ったからって、絶対に自慢なんかしなかった。
「…そういえば、私霧島さんに分からない問題を教えてもらった事がある」
華の近くに居た別の同級生が、思い出したように言った。
「霧島さんって、頭いいよね。噂じゃ、彩礼学園に余裕で進学できた、って」
彩礼学園とは、この県で一番の進学校だ。入るにはテストの平均点が八十点以上でないと確実に無理だ、と言われている。
「そうなの!中学の時に先生から『彩礼学園に行ってほしい!』と強く勧められていたのよ!」
自慢げに話す華を、結は一瞬横目でちらっと見る。だがすぐに『いつもの事です』という顔で、文庫本の次のページをめくった。
「でも、どうしてこの高校に来たんだろう?」
「結の両親が、この高校出身なの。いつも楽しそうに高校生だった頃を話していたから、結も『行きたい』って決めたんだって!」
結が話さない代わりに、って言わんばかりに華がどんどん結の事情を喋っていく。
ちなみになぜ華がここまで結の事情を知っているのかというと、結と華が従姉妹同士だからだ。華の父親は結の父親の弟であり、商才を見込まれて成宮家に婿養子になったのである。
華の父親は、結の事も自慢にしている時があり、成宮家の情報ネットワークでこの事を知った後、彩礼学園への進学を強く勧めたのだ。
しかし結の父親は、結の希望を優先したのだ。周りに自分の優秀さを認めさせるために高校へ行くわけではない、と。
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