第149話 番外編・校外学習での出来事 後編

「…え?そうなの?」

「…うん、私は最近気づいたけど、根室さんは成宮さんへ何度か嫌味を言っているんだって」

 戸惑う竹町へ、杉村がそう説明した。

「どうして根室さんは、成宮さんへ嫌味を言うんだろう…?」

 竹町にとって華は、親友の杉村藍ちゃんを助けてくれた恩人だ。だが杉村は、根室は一方的に華へ嫌味を言っているようだ、という話も聞いた。 

「成宮さんが羨ましいからじゃない?お金持ちだけでなく美人で頭もいいから?」

「ホント成宮さんは性格もいいし、才色兼備なお嬢様だから、勝手にひがんでいるからかもよー」

 これまでの嫌味や態度から、女生徒達はそう推測した。

「どうしてなのか私には分からないけど…、もし何か気に障ることでもしたのかしら…?」

 これまでは「世の中いろんな人がいるから」とあまり気にしてなかったが、もしこちら側に原因があるのなら…、と華は思った。

「…それですが、前に直接聞いてみたんです」

 結からの発言に、華達は注目する。

「それは『親がすごいお金持ちで地位もあるから、何でも好き勝手できる、というところがムカつくだけ』という理由でした」

 別の女生徒達は「何それ!?」とツッコんだ。

「やっぱり単なるヒガミじゃない!?」

「成宮さんは、何も悪くないよ!」

 女生徒たちがそう騒ぐ中、華は「そうなの…?」と改めて結に聞いてきた。

「ええ。華さんが気に病むほどではないと思いますが、やたらとお金を使うのは、なるべく控えたほうがいいと思いますよ」

 本人に悪気がなかったとしても、反感を買ってしまう場合ある。根室は、自由にお金が使えることで何でもできる華が羨ましかったからかもしれない。    

「…そう」

 前に結からお金の事にについて注意されたが、他人から言われたのは初めてだった。もしかしたら根室は、結以外の人が言いにくい事を代わりに言ってくれているの

かもしれない。

「…速く食べ終えた方がいいですね」

 結からの指摘に、華達はアイスを食べている途中だと思い出した。半分以上食べていたが、残りが溶けかかっていたのだ。

「た、大変!」

 慌てて食べ始めた華達へ、杉村と竹町もトイレへ行く途中だと思い出した。

「それじゃあ、私達はこれで」

 片手を上げながらトイレへ向かった二人を、冷静にアイスを食べながら、結は会釈して見送ったのであった。



―終― 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る