第144話 傷つける友人、助ける他人 その82

「…霧島さんのおかげで、終野さんも助けられた気がするの」

 そう答えたのは、竹町だった。

「終野さんがあんな事をしたのは、寂しかったからって分かったから。霧島さんが、終野さんの心の傷について言ってくれた事で、終野さんも、終野さんの両親もどうすればいいのか分かったんだと思う」

 結が事件を解決してくれたから、その結果、終野一家も救われるきっかけをつかめた。竹町は、結がしてくれた行為に感謝していたのだ。

「…私も、あの手紙を見せてくれてよかった、と思うよ。おかげで『あんな嫌な思い出なんかにに負けるもんか!』って思えるようになってきたから」

 終野からの心の傷は、竹町と一緒に居る事で徐々に癒えてきた。そこに突然もたらされた終野からの謝罪の手紙を見た時、衝撃のあまり頭が動かなかったのだ。

 あの自己中な終野が、泣きながら謝った。予想すらできなかった目の前の現実に、どう対応すればいいのか混乱もしていたのだ。

 それに対し怒りがわかなかったのは、もう怒る気にすらならなかったからだ。前みたいにつきまとわれる心配をしなくてすんだから。

「だから霧島さんは謝らないで!本当に、手紙の事を含めて心からお礼がしたいくらいだよ!!」

 杉村達が傷ついてなかった、と分かって、結は心底ホッとしていた。

「…そうですか」

 自分がとった行動は、相手を傷つけずにすんだ。

 結は結果的に良い方向へとなった事に、不安と緊張で固くなっていた体から力が抜けていくのを感じた。

「あれ?結!それに杉村さんに竹町さん!三人そろってどうしたの!?」

 保健室の近くから移動しようとした時、思わぬ別の声が聞こえてきた。

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