第143話 傷つける友人、助ける他人 その81
「そう、無理しないでね」
辛い過去を乗り越えようとする杉村と竹町へ、カウンセラーの先生は優しい言葉を送った。
「杉村さん、竹町さん、すみませんでした」
一歩先に保健室から出た結は、後から出てきた杉村と竹町へ謝罪した。
「え?どうして霧島さんが謝るの!?」
杉村は驚き半分、戸惑い半分の顔で声を出す。竹町も、なぜ結が謝って来たのか、すぐ分からなかった。
「終野さんからの手紙の事を、先に言わなかった事です。もしかしたら、お二人が拒否されると思っていたので…」
五時限目の休み時間に結が保健室へ行ったのは、終野の様子を聞くためだ。午前中は、結は「そっとしたほうがいい」と考えていたため、聞きにいこうとしなかったのだ。
だが昼休みに呼んだ文庫本の中で、似たような状況が出てきたのだ。その中で、迷う主人公の背中を押すように「今聞かないと後悔する」というセリフを呼ん
だ瞬間、結は『終野の様子を聞きに行こう!』と決心した。
保健室へ行った時に、カウンセラーの先生から手紙の事を聞いた結は、その場で頼まれたこともあり『杉村と竹町達を保健室へ連れてくる』という判断をした。
先に保健室へ連れてくれば、終野からの手紙を見てくれるだろう、と結は思ったのだ。
「先生から『終野さんは前より少しずつ執着が落ち着いてきている』と聞いたので、つい大丈夫だと勝手に判断してしまいました。お二人のお気持ちを考えずに軽率な事をしてしまいました」
再び頭を下げた結へ、二人そろって「そんなことない!」と声を揃えた。
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