第141話 傷つける友人、助ける他人 その79
「…二人は、終野さんと仲直りしたい?」
カウンセラーの先生が、結達の元へ来た時にそう聞いてきた。
「……」
杉村は、無言だった。その表情には、怒りは見られなかったが。
「…今は、さすがに無理です。私だけでなく、藍ちゃんも辛い目に遭いましたから」
竹町はカウンセラーの先生の顔色を伺うように答える。
たいていの大人は「友達なんだから仲直りしなさい」と答えるからだ。よっぽど酷い事をした、と大人が認めない限り。
終野とは初めは仲良くやっていたが、もう一人の友人から絶縁されてから終野は二人を苦しめるようになっていった。その時につけられた心の傷は、今でも完全に癒えていない。
「そうね、無理に仲直りしなくてもいいわ」
だが、カウンセラーの先生はそんな杉村と竹町の意思を肯定した。
「…!?」
てっきり「仲直りしなさい」と言われるのかと思っていた二人は、驚きながらカウンセラーの先生を見た。
「友達って、無理して付き合わなくてもいいのよ。お互い一緒に居て、楽しくて、心がほっとして肩の力を入れなくても付き合える。そんな関係がいい、と思っているの」
辛い思いをさせられた終野とは、無理に仲直りしなくてもいい。そう言ってくれるだけで、二人は救われた気がした。
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