第140話 傷つける友人、助ける他人 その78

「それは、連休前に終野さんから預かってきたの」

 二人が目を通したタイミングで、カウンセラーの先生が声をかけた。

「終野さん、少しだけど執着は納まりつつあったわ。御両親も協力してくださるから、前より少しづつ良くなっているわ」

 終野の執着の原因の一つは、小学生の頃に親からの愛情を十分に与えられなかったことだ。その分、今度こそしっかりと本当の愛情を注いでいるから、終野の心の傷は少しずつだか癒えてきているらしい。

「…泣きながら、書いたんだね」

 竹町の言葉に、杉村は再び便箋を見てみた。

 確かに、下の方に、涙の後がいくつもあった。


 手紙を受け取った二人の様子を、結はじっと見守っていた。

 もしかしたら、杉村はその手紙を破り捨ててしまう可能性があるのだ。自分だけでなく、大事なもう一人の親友を苦しめていた怒りがまだ収まっていないから。

 だが、もしそうなったとしても、結は杉村を非難する気はなかった。終野がこの二人へした事は、『親友』と言いながらも長い間自分勝手な思い込みで苦しめていた行為だから。

 杉村は手紙を持ったまま、その手を動かなかった。

 この手紙だけでなく、読んだ後どうしたらいいのか、迷っているようにも見える。

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