第138話 傷つける友人、助ける他人 その76

 五時限目の休み時間、結は速足で保健室へ向かった。

 保健室に着くと、数回ノックしてから「失礼します」と小声で言いながら静かに入っていった。

 保健室には、二人の女教師が居た。保健室の先生と、連休前まで特別室で終野の担任をやっていたスクールカウンセラーだ。

 二人は何か話し合っていたらしく、お茶が入っていたコップをお供に、相談用の机に向かい合って座っていた。

「霧島さん、どうしたの?」

 結が入ってきたことに気づいた保健室の先生が、声をかけてきた。


 放課後、杉村と竹町は一緒に廊下を歩いていた。

 今日はお互い部活がなかったので、一緒に帰る途中だった。鞄を手に持ち「今日はどこか寄り道して帰ろうか」と言いながら階段の近くまで来た。

「杉村さん、竹町さん」

 突然、後ろから冷静さを伴った声が聞こえてきた。

「…霧島さん!?」

 振り向くと、少し距離を取った場所で結がゆっくりとこちらへ近づいてくるのが目に入ったのだ。

「…少し、お時間よろしいでしょうか?」

 何か重要な話があるような結の雰囲気に、二人は先ほどまでの楽しい気分から、真剣に話を聞く体制になった。 

 

「…実は、お二人へ見せたい物があるんです」

 保健室までやって来た結達三人は、まず杉村と竹町の二人を、先に保健室の中に置いてある相談用の机に座ってもらった。 

 ただならぬ雰囲気に、杉村はつい身構えてしまう。

竹町はそんな杉村へ、それを和らげようとするように「何だろうね?」と声をかけた。

 保健室へ入った後、結はそこから離れた場所にある別の椅子に座っていたスクールカウンセラーの元へと向かっていった。そこで、二通の封筒を受け取ると、慎重にそれを持って歩いて来たのだ。

 結は二人の前まで来ると、その封筒を両手で机の端の方に置いた。そして結は二人と向かい合わせになるように、空いた椅子に椅子へ座ったのだった。

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