第132話 傷つける友人、助ける他人 その70

「みんなー!お土産配るわよー!!」

 昼休み、自席から立ち上がった華は、お洒落なデザインの紙袋から、お菓子の箱を取り出した。

「成宮さん、それが沖縄のお土産!?」

 午前中の休み時間に、連休の旅行の話を聞いていた同級生の一人が歓喜の声を上げる。

「うん!一人一個ずつ配るね!」

 開けてみると、沖縄の名物のお菓子が並べられていた。華が差し出した個包装のお菓子を、瞬く間に同級生達が手を伸ばしていったのだ。

 だが、根室はお菓子を配る前に、教室から出て行った。流と満が手に取った後、華は残り三個となったお菓子を見て、少し離れた場所にある自席で弁当箱を片付けていた結へ声をかけたのだ。

「結、みんなと一緒に食べましょう!」

 華に促され、結は「ありがとうございます」と礼を言う。

「これは根室さんと、杉山さんの分ね。もしかしたら後で欲しがるかもしれないから」

 席を立って、ゆっくりとやって来た結が手にした後、華はそう言いながら箱を閉めた。

 他の同級生達は(根室は欲しがらないんじゃあ)と思っていたが、誰も口に出さなかった。華の気遣いを台無しにしたくなかったからだ。

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