第129話 傷つける友人、助ける他人 その67

 満と流がその場から去った時、結達は職員室に着いた。

 まだ残っていた冬沢先生と、担任の春山先生へ下駄箱での事件の真相をすべて話したのだ。

 竹町が自分から話し始めたことと、被害者である杉村が必死でかばったため、竹町への罰はまず『杉村さんの代わりに、下駄箱を綺麗にすること』となった。

 そして終野のスマホにあった例の写真は、職員室へ行く前に結が終野のスマホで電話をした終野の両親が職員室まで来た後、それを確認した先生達と終野の両親の目の前ですべて消去した。

 その作業は杉村と竹町達が行ったが、その間終野は意外にも大人しくしていたのだ。

 それを見届けた終野の両親は「娘を転校させる」と言い出した。このままだと、結と華にも危害を加えかねない、と判断したからだ。

 そして両親が土下座をした後も、終野からは謝罪の言葉は出なかった。だが、それでも杉村と竹町はもう終野本人からの謝罪はどうでも良かったのだ。

 これで二度と、終野に振り回されずにすんだから。

 

「…事件は、ほぼ解決しましたね」

 結達が職員室を出て行った後、冬沢先生が自分の席に座りながらそう呟いた。

「すみません、私の生徒達が世話になって」

 その近くまでやって来た春山先生が、コーヒーが入った紙コップを差し出す。それは、今回の事件で生徒達を心配してくれた冬沢先生への礼だった。

「いえいえ、クラスは違っても、皆大事な生徒です」

 コーヒーを受け取った冬沢先生の顔は『教師として当たり前な事をした』と主張していた。

「それに今回の事件を解決に導いたのは、霧島さんです。霧島さんから写真の件で提案された時は少し驚きましたけど、それで今回はすぐに真相を知ることができましたから」

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