第128話 傷つける友人、助ける他人 その66

 満と流もつい竹町の犯行の動機を聞いてしまったが、竹町に裏切られた、という気分にはならなかった。

 竹町が終野に脅されたいた、と知ったからだ。それを聞いた結は、竹町と共に杉村の元へ行き、事情を話した。 

 杉村はショックを受けていたが、結の仲介もありすぐに竹町を許した。大切な白いスニーカーを汚さないようにしてくれたからだ。

 その後、終野がいる特別室まで結達三人で移動し、竹町だけでカウンセリングが終わった終野に会いに行った。杉村のスニーカーの件を話すために。

 杉村は特別室から離れた場所で待ち、結は特別室の裏を回って、入り口のすぐ近くで待機していた。終野がスマホを出した瞬間を狙って、結が終野のスマホを奪うためだ。

 そのスマホを奪ったおかげで、竹町が恐れていた写真のネットへの流出を防げた。これで、竹町はもう終野から脅されずにすむ。

 それから、なぜ終野がこんな事をしたのかという理由も分かった。それでも、杉村は終野を許せなかったのだ。

 最後に、結が意外な事を言い出し、終野はそれに反論すらしなかった。そして、四人で職員室へ向かっていったのだった。


「…まあ、さすがに俺たちの口から言えないよな」

 満はそう言いながら、流の方を向く。

「もちろんだろ。これは本人から言ったほうがいい」

 流も、同じ考えだった。二人とも、竹町の犯行の理由は言わないでおこう、と結論付けたのだ。

 その理由は、絶対に他人に知られたくなかったのも納得がいく内容だ。さすがに竹町をかばうためとはいえ、それはこちらから言わないほうがいい。

「あとは、霧島達にまかせよう」

 満からの提案に、流は「ああ」と賛同した。

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