第126話 傷つける友人、助ける他人 その64
「それでは終野さん、よろしいですか?」
へたり込んでいた終野を、結が一緒に立つことを促す。終野は、意外に大人しい態度で、結と一緒に立ったのだ。
うなだれていたため、表情は分からなかった。結が「行きましょう」と声をかけると、杉村達も一緒に歩き出す。
四人の女生徒達は、校舎へと歩き始めた。この事件を、完全に終わらせるために。
「…終わったみたいだな」
特別室から少し離れた場所の木の陰から、男子生徒の声が聞こえてきた。
「ああ…」
もう一人の男子生徒の声が、そう返事をする。
「なんか、霧島が終野を説得したみたいだな…」
驚きの顔で、最初に声を出した男子生徒である流が呟く。あのしつこい終野が、おとなしく説得されるとは思いもしなかったのだ。
「霧島は相手の気持ちにとことん寄り添うから、終野もそれでおとなしくなったかもな」
少し考えた後、満がそう口にした。
二人がここに居た理由は、結の行動が気になったからだ。竹町との話が終わった後、結が教室へすぐ戻らなかったのがふと気になったため、満達もそのまま残ったのだ。
結は、四組の教室の前に居た。どうやら、先に教室へ戻った竹町の様子を見に行ったようだった。
ギリギリ話が聞こえる所まで近づいた満の目に、結が教室の入り口の前で立っていた竹町も入ってきた。
結と話していた竹町は、どこか落ち込んでいた。どうやら、四組の教室でも竹町が疑われた話が知られてしまったらしい。
別の四組の生徒が竹町のジャージを勝手に見てみたが、黒い汚れや、濡れた跡はなかった。それで結はその生徒達に竹町が犯人だと決まったわけではない事を話したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます