第123話 傷つける友人、助ける他人 その61
「私は、終野さんが今でも傷ついているからだと思います」
泣きじゃくる終野に対し、どうすればいいのか戸惑う杉村と竹町から一歩進んだ結が、そう言葉をかけた。
「そうよっ!!あんたと成宮華のせいで傷ついているのよっ!!」
八つ当たりをする終野へ、結はひるむことなく言葉を続ける。
「いいえ、もっと前からです。小学生の頃から、終野さんは傷ついたままなんです」
「え…!?」
思わぬ内容の説明に、杉村と竹町は同時に驚く。
「終野さんの御両親と話をした時、ブラック企業に勤めていた時は何度も終野さんとの約束を破ってしまった事を今でも後悔している、と言っていました」
終野が小学生だった頃、両親は毎日残業や休日出勤などでほぼ家に帰れなかった。それで、誕生日や休みの日に一緒に過ごせず、約束を守れなかったのだ。
小学校の卒業式も、結局出れなかった。その時に娘が「約束を守ってくれないのは、いつものことだし」と、不信感に満ちた目で呟いたのを見て、転職する決意をしたのだ。
激務の間に転職活動をした結果、成宮グループの会社に転職できた。ちなみに、そのブラック企業は面接の時に事情を聞いた成宮グループからの報告がきっか
けで労働基準監督署の立ち入り調査が入り、今までの違法がすべてバレ、終野の両親以外の従業員にも今までの正当な賃金が支払われたのだ。
成宮グループはホワイト企業なので、休みも余裕で取れ、定時で帰れるのは当たり前だった。それでようやく家族の時間が取れる、と思っていたが娘は友人との付き合いを優先していたのだ。
今まで我慢させてしまった詫びとして、欲しい物を何でも買い与えた。「友人と遊びに行くから」と言われた時に、何度も多額のお小遣いを渡したりした。
今思えば、それが娘をこんな風にしてしまったのかもしれない。何でも言う事を聞くことが、娘への愛情だ、と。
それで、娘は友達にも『こちらの言う事を聞くのは友達として当然』と思い込んでしまい、友人を束縛して無理やり言う事を聞かせるようになってしまったのだ。
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