第119話 傷つける友人、助ける他人 その57
「…はあっ!!?」
絶叫した終野へ、杉村は自分の足元を見せる。
「本当だよ!さやちゃんは私のスニーカーを汚してなんかいないよ!」
確かに、杉村が履いていたのは白いスニーカーだ。しかも、黒い汚れなど一つもない。
「…なんでっ!?」
「藍ちゃんが憧れていたのを知っていたから、汚したくなかったの」
小学生の頃の思い出は、今でも色あせていない。だから竹町は、その頃の憧れの象徴である白いスニーカーを汚したくなかったのだ。
「さっき、さやちゃんから聞かされた時は、ショックだったよ…。でも、霧島さんが居てくれたから、すぐにさやちゃんがわざとやったわけじゃない、って理解できたの」
今日、英会話部は休みだったが、杉村は春山先生に言われてまだ学校に残っていた。
それは、下駄箱の中を掃除するためだ。六時間目が終わった時に「あともう少しで調査が終わるから、その後に下駄箱の掃除をしてもいい」と言われた。
少しでも早く下駄箱の中の汚れを拭きたかったが、調査が終わるまで図書室で本を読んでいた。
そして何冊か読み終えた時に、結と竹町がやってきたのだ。竹町が深刻な顔をしていたので、結と共に図書室の外で話を聞くことにした。
竹町から下駄箱の事件の真相を聞かされた瞬間、杉村は心に強い衝撃を受けた。だが、すぐに結が一足先に聞いた事情を説明したことから、竹町は本当はやりたくな
かった事を理解できたのだ。
「…まさか、そんな酷いことをしていたなんて。もう終野さんとは関わりたくないよ」
それは、杉村からの、終野への絶縁宣言だった。
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