第118話 傷つける友人、助ける他人 その56

 終野から連絡を貰った後、竹町は悩んだ。着替えの写真をバラされたくないからって、杉村の白いスニーカーを汚したくなかったからだ。

 小学生の頃、大人気だったドラマで主役の女子高校生が颯爽を履いていたのを見て、杉村が目を輝かせていたのを知っていた。だがらあのスニーカーを汚したくなか

ったのだ。

 しかも今、杉村は成宮グループの令嬢である華の加護を受けている。もし、手を出したのがバレてしまったら竹町も周りから非難されてしまう。

 だからと言って、写真の事を考えたら家族にも相談なんかできない。悩んだ末、竹町は犯人は自分だとバレない方法で汚すしかなかった。

 偶然テレビの推理ドラマで、建物を放火するため使ったトリックを見た瞬間に、竹町は靴は汚さない方法を思いついたのだ。それが、あの下駄箱の中に仕掛けたトリ

ックだった。

 だが、結もそのドラマを見ていたため、すぐ気づかれてしまった。だけど結は、スニーカーが手前に移動していたことから、竹町が『スニーカーを汚したくない』と思っていた事に気づいたのだ。

「…最低だね、終野さん」

 そう声を絞り出していた杉村は、怒りで体が震えていた。

「なんで藍ちゃんが私に怒っているの?靴を汚したのは、竹町さんだよ?」

 『スニーカー』ではなく、『靴』と言っている終野の自分勝手な言い方に、杉村達はいちいち訂正する気すらなかった。

「終野さん、竹町さんはスニーカーを汚していませんよ」

 そして結の口から出たのは、訂正ではなく、二人の友情の強さを表した言葉だった。

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