第113話 傷つける友人、助ける他人 その51

「終わったあ~っ!」

 放課後、教師が教室から出て行った後、終野は机の上で突っ伏していた。

 ようやく、カウンセリングが終わったのだ。今、ここでの授業を担当している教師は、スクールカウンセラーでもあるので、授業と掃除が終わった後は必ずこうしてカウンセリングを受けるのが日課になっている。

「…ホント、うっとうしい」

 終野にしてみれば、こんな事を受けさせる暇があるのなら大親友の『藍ちゃん』とお喋りしたい!と本気で思っていた。だが、今は成宮華が手配した弁護士により、『藍ちゃん』とは一切話せない状態になっている。

 さらに『藍ちゃん』は今、全然似合わない恰好をしているのだ。お揃いでしていた、可愛い恰好の方が似合うのに!

 だけど、これからはそんな恰好はしないはず。

 そう思いながら、終野は鞄を持たずに立ち上がって少しご機嫌な顔で教室を出て行った。


 特別室の玄関を出ると、一人の女生徒が近づいて来た。

 おとなしそうなその女生徒を見て、終野は「こっちこっちー!」を手招きをする。女生徒は、不安を隠せないまま終野の数歩前で足を止めた。

「ちゃんと、やったよね!」

 明るい笑顔の終野に対し、その女生徒はさらに暗い顔で「…うん」と答える。

「ほーんと良かったあ!藍ちゃんにあんな靴は似合わないもんね!これで明日から、お揃いの靴を履いてくれるもんね!」

 白いスニーカーではなく、黒の大人っぽいデザインの革靴を履いた杉村を想像し、終野はその場でくるりと一回転した。

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