第109話 傷つける友人、助ける他人 その㊼
「―!?」
それは、白い部分に何か黒い物がついていた写真だった。
「よく見てみると、この黒い部分の周りと、下駄箱の部分の色が微妙に違います」
結が言った通り、黒い部分の周りの方がさらに少し白かった。
「これは、紙の白さです。何か、白い紙に包んで上の方へ貼り付けてあるんです」
そう言われた竹町は、両手をぎゅっと握りしめてしまった。
「これを見た他の先生方は、上から多めに黒い水が垂れてきたでは、と言っていました。それで、ふと、前に推理物であったトリックを思い出したのです」
「…トリック!?」
「それは、平べったい耐水性の小さい袋に穴を開け、その穴をテープで塞いでから、水を入れます。そして水が漏れないようにしっかりとテープとかで塞いだ後
に周りを白い紙で包むのです」
そうして出来た物を、下駄箱の中に貼り付けたというのだ。両面テープで貼ったのは、目立たなくするためだけでなく、あとから剝がしやすいのもあった。
「で、でもそれだったら、手を奥へ入れないと、穴は塞がったままでしょう…?」
それに紙で包んでしまったら、穴を塞いでいるテープをすぐに取れない。写真に写っている紙は、そのために破った跡など一切なかったのだ。
「それなら、その部分だけ包まないように開けておけばいいのです。そうすれば、すぐに剥がせます」
「―!?」
写真をよく見てみると、黒い部分は小さな四角の形をしていた。袋の中はもっと汚れているが、白い紙に覆われているため、その四角い部分の所しか黒く見えないのだ。
「なぜわざわざこんな細工をしたのか…、おそらくすぐに見つからないようにするためだと思います」
下駄箱を覗いた時に黒い液体があったら、その場で取り除かれてしまう。それに、黒い液体で靴を汚したいのなら、他にも方法はあるのに、なぜわざわざこん
なトリックを使ったのか。
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