第110話 傷つける友人、助ける他人 その㊽
「考えられるのは、アリバイを作るためです。その場で靴を汚さなかったから、犯人ではない、という」
いくら登下校または昼休み以外の時間帯を狙ったとしても、防犯カメラがあるからすぐに疑われてしまう。
しかも、竹町の無実は防犯カメラによって証明されたのだ。杉村の下駄箱まで来たものの、すぐに間違えたことに気づき、靴を少し手前まで動かしただけでそれ以外何もしていないから。
「先ほど、先生方に頼んで防犯カメラの映像を見せていただきました。二時間目が終わった後、竹町さんは杉村さんの靴を少し動かしただけでした」
結からの説明を聞き、竹町は一瞬ホッとした。
「ですが、よく見てみると、靴を掴む前にわざわざ手を上の方へと上げているんです。まるで、上にある何かを掴むように」
竹町の顔から、血の気が引いた。それでも、結はさらに続ける。
「拡大してみると、それは白いテープでした。片面のテープの粘着部分に白い紙を貼った、そんな感じでした」
一瞬の事だからスロー再生してみないと分からなかったが、確かに奥の方へと伸びていたそのテープを引っ張っていたのだ。その後、剥がしたテープを急いで
丸めると、ジャージの袖の中へ押し込んだのだ。
「何度もよく見てみたら、そのテープの両端には紙は貼ってなかったんです。そのテープの奥の方の端に、袋の穴をフタしている別のテープをくっつけておけばわざわざ奥へ手を入れなくても、袋の穴を開けられます」
そして、そのテープの手前の方の端は、下駄箱の上に軽く貼っておいた。そうすれば、下駄箱を覗いてもすぐにこのトリックがバレずにすむのだ。
「さらに、手に黒い液体が入っている容器持っていないということで、もし疑われてもすぐに犯人だと決めつけられないでしょう。そのために、このようなトリ
ックを使ったのです」
結の口から語られた内容は、竹町が犯人だと示していた。
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