第107話 傷つける友人、助ける他人 その㊺

「まさか、杉村とあの生徒が友人だったとはなあ…」

 一組の教室のドアから覗いていた流が、意外だという顔をしていた。

「違うクラスだったから、気づかなかったのは無理ないと思うな」

 満の中学からも、この高校に入学した生徒は何人かいる。接点がなければ、すぐ気づかないのは無理もない。

「私も、気づかなかったよ」

 満達の後ろから、安田がそう声をかけてきた。安田も杉村と同じ中学出身であった。

「そっか、世の中狭いもんだなあ」

 流が腕を組んで感心すると、安田は「そうだね」と笑いながらそっと廊下から覗いてみる。

「…竹町さん、学校へ行けるようになったんだ」

 別のクラスで、まったく接点はなかったが、竹町が今ではこうして登校できるようになった事は良かった、と安田は思った。



 放課後、部活がない生徒達は下校していた。

 今日の部活は、まだどこも終わっていない。だからこの機会を逃すわけにはいかなかった。

 今なら、周りから疑われずにすむ。行動を起こすには最後のチャンスであった。

 玄関へ行き、進学科の下駄箱へと手を伸ばす。二段になっていた下駄箱の下の方の奥へと手を動かすと、安堵した顔となった。

―良かった、まだバレていない。

 そう思いながら手を裏返して、握っている物を見せないようにする。

 それを隠しながら、急いで玄関から離れた。後は家に持って帰って処分すれば―。

「きゃっ!?」

 教室へ戻ろうとしたら、いきなり誰かとぶつかった。

「ご、ごめんなさい…!!」

 ぶつかった相手を見て、さらに驚いた。まさか、このタイミングで会うとは思いもしなかったのだ。

「竹町さん、お怪我はありませんか?」

 玄関のすぐ近くの廊下でぶつかったのは、結だった。

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