第105話 傷つける友人、助ける他人 その㊸
「何を騒いでいるの!?」
結達から少し離れた場所で関わるタイミングを伺っていた満と流の後ろから、事情を求める声が掛けられた。
「冬沢先生!」
体育科の教師で、一年四組の担任であるその女教師の登場に、その場に居た生徒達の注目が集まる。そして結達も、冬沢先生の方を向いていた。
「こちらの人達が、竹町さんが杉村さんの下駄箱を汚した、って問い詰めていたんです」
近づいて来た冬沢先生へ、華がすぐ説明する。
「そうなの?でも、それは無理があると思うわ」
「ええっ!?」
冬沢先生からの否定の言葉に、生徒達から一斉に驚きの声が上がった。
「さっき防犯カメラの映像を見て確認したけど、貴女が下駄箱に居た時、手に黒い液体が入っている物を持っていなかった映像が映っていたの」
そうはっきり証言した事により、竹町の疑いが一気に晴れた。防犯カメラにまで映っていたのなら、もう無実が証明されたようなものだ。
「それにこの件は、今詳しく調べているから、推測で疑って騒ぎ立てないようにね」
「…はい」
まさにそうしてしまった三人は、気まずい顔でうつむいてしまった。
「あなた達、何か言う事があるんじゃない?」
華に促され、三人の女生徒達は「ごめんなさい…」と謝ったのだ。
他の生徒達が解散した後、結と杉村と竹町と華はその場で話をしていた。
「先ほどはすみませんでした」
結が、ジャージを見せてくれるように頼んだ事を謝罪した。
「う。ううん。別にいいよ。かばってくれて、ありがとう」
ジャージの事は、疑っていたあの三人を納得させるためだと分かっていた竹町は、結へ逆に礼を言ったのだ。
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