第104話 傷つける友人、助ける他人 その㊷
「その時、手に何か持っていましたか?」
結からの冷静な質問に、竹町を問い詰めていた三人は何かに気づいた顔となった。
「…そういえば、何も持っていなかったような気が…」
目撃した、結から見て右側に居た女生徒が気まずそうに答える。
「で、でもジャージの中に隠していたとか!」
「袖の中に隠せば、見つからないでしょ!?」
隣にいた二人が、慌ててそう主張した。もし、竹町が無実なら、一緒に問い詰めていた自分達も同罪となってしまうからだ。
「そうですか」
確かに、この三人の言い分にも一理ある。
「竹町さん、急ですみませんがジャージの中を見せてくれませんか?もしそうだとしたら、袖などに汚れなどが見つかるはずです」
「…え!?」
結からの頼みに、竹内はすぐ承諾ができなかった。まさかジャージを調べることになるとは思わなかったからだ。
「さやちゃん!?」
結達の会話が途切れたタイミングで、杉村が駆け寄ってきた。
「…藍ちゃん!?」
こちらへ寄り添うようにやって来た杉村を見て、竹町は大きな声を出す。
「知り合いなの?」
すぐここまで来たものの、結と他の女生徒達の会話へ入り込むタイミングがなかったことから、今まで立ち止まっていた華がそう聞いてきた。
「うん、小学校からの友達。まさか、この学校に居たなんて…!!」
思いがけない再会に、杉村は驚く。その中にわずかな喜びも混ざっていた。
「杉村さん、この人が下駄箱を汚したのよ!」
被害にあった本人が来たことから、別の女生徒がいきなりそう言い出した。
「…なに言ってるの?」
「…え!?」
杉村の声には、怒りが籠っていた。予想外の反応に、その女生徒達はたじろぐ。
「さやちゃんがそんな事なんかしない!優しい子だから人が嫌がることなんかしないよ!!」
大事な友達と平気で疑う人達へ、杉村は怒りをぶつけたのだ。
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