第103話 傷つける友人、助ける他人 その㊶

 廊下を出ると、奥の方で一人の女生徒が囲まれていた。

 同じ進学科である二組の教室を通り過ぎると、三組の芸術科の教室に着いた。ちなみに、四組は体育科の教室である。

「どうしたのですか!?」

 芸術科の教室の近くの廊下まで来た結は、めったに出さない大声で呼びかけた。

 突然呼びかけられた数人の生徒達が、びっくりして振り向く。その隙間から、一人の女生徒が泣きそうな顔で結を見ていた。

 肩までの三つ編みが特徴な、おとなしそうな少女だ。制服の襟には、芸術科の生徒の印も入った校章を付けている。 

「何があったのですか?」

 その女生徒を庇うように、結は間へ入った。

「昼休み、進学科の子の下駄箱が汚されたでしょ?犯人は竹町さんじゃないか?って聞いていただけよ」

 結から見て右側の別の女生徒が、そう答える。彼女の襟にも、竹町と同じ芸術科の証である校章が付いていた。

「どうして、そう思うのですか?」

 冷静に、結は質問する。この泣きそうな顔をしている竹町を犯人だと決めつけた理由を知るために。

「二時限目の体育が終わった後、竹町さんは一番最後に玄関まで来たの。その時、わざわざ進学科の下駄箱の方へと行ったんだよ」

 それを聞いた竹町は、一瞬ビクッと体が震えた。

「変だな、と思って見てみたら、下駄箱の中へ手を入れていたのよ。そしたら、昼休みに進学科の下駄箱が汚れていた、って言うじゃない。だから竹町さんの仕業じゃ

ない?」

 他の二人も、同意するように頷く。つまり、杉村の下駄箱を汚したのは竹町だ、と言うのだ。

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