第102話 傷つける友人、助ける他人 その㊵
「成宮さんと一緒にいるから、杉村へ嫌がらせをしたってことか!?」
流の大きな声が、さらに空気を変えていく。それを聞いた杉村が、戸惑いと不安が混ざった顔になった。
「でも、どうして杉村さんが狙われるの?他の皆も、私と一緒に居るのに?」
「たまたま噂を聞きつけたから、かもしれません。急に成宮グループの加護を受けるようになったから、それが羨ましい、と思ったのもあるかもしれませんが」
結からの仮説に、華は「頼みごとがあるなら、遠慮なく言ってくれればいいのに…」と困った顔になる。こんな嫌がらせをするくらいなら、直接こちらへ言ってくれたほうが何倍もいいからだ。
「まあ、先生達が調べてくれるから、オレ達はそれを待とうぜ!」
教室全体の雰囲気を変えるように、流は明るく言った。
(確かに、最近成宮さんが優しくしてくれるからつい頼りっぱなしだったけど、こうして妬んでくる人がいるなんて…)
突然向けられた黒色の悪意に、杉村の顔は晴れず、さらに心の中の不安が広がっていった。
五時限目が終わると、華はすぐ杉村の元へとやって来た。
まだ不安な顔をしていた杉本を気遣うためだ。空いたままになっている終野の席に座り、何か話しかけている。
結はスマホを見ながら、それを時々横目で見ていた。
慣れた手つきでスマホの画面を操作し、何か見つけた顔になったのだ。
「大変だ!芸術科の子が犯人だ、って騒いでいる!」
トイレへ行こうとした別の男子生徒が、知らせに教室へと戻ってきた!
それを聞いた結が、スマホをポケットにしまうと急いで教室を出る。続いて杉村と華が立ち上がり、同じく教室から走り始めたのだ。
立ち話をしていた満と流も、それに続いた。他の生徒達は、座ったままの根室を除いて、自分達も行っていいのか戸惑っていた。
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