第101話 傷つける友人、助ける他人 その㊴
「根室さん!」
教室の端で、後ろの壁を背にして立っていた女生徒に華達の視線が集まった。
「成宮さんがあの執着女から助けたことで、杉村さんが自由を謳歌出来てるけど、それで終わりだと思っているの?」
「どういう意味だよ?」
腕を組んで気難しい顔をしていた根室に、流はさらに聞いてみる。
「他にも杉村さんをどうにかしたい、という人達がいるってことよ。悲劇のヒロインから、お姫様に特別扱いされる幸運なヒロインへとなったのよ。今まで辛い目にあ
っていたからって、やたらと世話をやかれていて今はいい思いをしているでしょ?」
「…いい思いって」
確かに、華はいろいろと手配してくれた。だが、喫茶店の代金だけでなく、美容院の分も杉村の両親が全額払ってくれたのだ。
「華さんは、手続きを代わりにやっただけです。弁護士への費用とかは、すべて杉村さんの御両親が払ってくれましたよ」
結が説明しても、根室の表情は変わらなかった。続けて、こう言ってきたのだ。
「こないだの貸し切りパーティーも、他のクラスで行きたがっていた人が何人もいたわ。終野さんの件で注目されているから、特別扱いされている杉村さんが狙われた
んじゃないの?」
終野の件は、他のクラスにも噂で伝わっていた。たとえ酷い目に遭っていたとしても『杉村が華に特別扱いされている』と思い込んだ他の生徒が嫌がらせをしたので
は?と、根室はそう言っているのだ。
「もしこれからもパーティーを開きたかったら、他のクラスの人達も招いたら?まあ、皆喜んで来てくれるとは限らないけど」
そう言い終えると、根室はいったん教室を出た。自分が変えてしまった空気を、気兼ねなく戻せるように。
「…根室の説も、一理あるな」
満が、考え込んだ顔でそう呟いた。
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