第99話 傷つける友人、助ける他人 その㊲

「霧島!」

 何枚も撮っていると、満と流がいつの間にか出来た人だかりをかき分けて、玄関へとやって来た。

「華さんは?」

「成宮なら、職員室へと行った。先生に知らせる、って」

「そうですか」

 満からそう聞いた結は、さらに撮影を続ける。一通り撮ったところで、スマホを下駄箱から出したのだ。

 そうして撮った写真を一枚づつ見始めた結は、ある事に気づいた。下駄箱の上の方の写真を拡大しようとしたが、

「結!」

 華の声で、結はスマホから顔を上げる。振り向くと、華が冬沢先生と一緒にこっちへやって来た。

「冬沢先生!?」

 てっきり春山先生を連れてくるものだと思っていた満と流は、思わず声を揃えて驚いてしまった。

「職員室へ向かっていたら、冬沢先生に会ったの!冬沢先生、今日の運動場の係だって!」

 この学校独自の教師の仕事として、運動場へ行って生徒達を見守る係がある。もし、生徒達にトラブルがあったらすぐ対応できるようにするためだ。

 体育教師が日替わりで担当しており、今日は冬沢先生がその係だった。

「成宮さんが慌てていたから私から声をかけたけど、何があったの!?」

「それが…」

 華の隣で質問してきた冬沢先生へ、結が答える前に杉村が説明した。

「…確かに、汚れているわね」

 説明を聞き終わった冬沢先生は、下駄箱を覗き込みながらそう呟く。

「確か、貴方が知らせてくれたと聞いたけど」

 下駄箱から視線を動かした冬沢先生の先には、あの男子生徒が居た。杉村の下駄が汚れていた事をわざわざ知らせてくれた同級生だ。

「はい!運動場でサッカーしようとして下駄箱まで行ったら、白いスニーカーがはみ出ていたんです。それでつい気になって覗いてみたら、黒い物が見えたからびっく

りして教室まで行ったんです」

 ここへ来るのが華達の後になってしまった理由は、先ほどまで教室で他の同級生達からの質問に答えていたからだ。ようやく解放されて、ここへ来られたという訳だ。

「…そうだったの、教えてくれてありがとう…」

 わざわざ教えてくれた男子生徒へ、杉村は礼を言った。

「ほんと、びっくりしたよ。下駄箱の中が真っ黒になっていたから」

 それには結達も同感だった。もし自分の下駄箱の中がいきなり汚されていたら、なんで!?と言わんばかりに動揺するだろう。

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