第95話 傷つける友人、助ける他人 その㉝

 学校側はさらに、休みの日は朝からボランティア活動をするように言ってきた。

 学校外でも、一人でいろんな体験をさせることで、杉村への執着心を和らげようとする試みだ。

 しかし、終野にしてみればこれは苦行だ。やりたくもない街中の掃除に早々とうんざりしていた。

 そうしているうちに、お昼の時間がやって来た。ボランティア活動のスタッフが届けてくれたお弁当を、近くの飲食許可が出ている公園のベンチで、渋々な顔で一人で食べることになった。

 それでも全部食べ終わった後、向こう側に座っていた同じ年の男女の話声が耳に飛び込んできた。

 それによると、男の子の方は近くの喫茶店でバイトをしているらしい。『今日は、その店は貸し切りなんだ』とい

う話も耳に飛び込んできた。

(そういえば、最初の頃に成宮華がパーティーを開いていたっけ)

 あの時はお揃いの赤いワンピースを着て、一緒に美味しいお菓子を食べていた事を思い出した終野は、隙を見てその喫茶店を覗いてみよう、と考えた。



 公園から出発した終野は、ゴミをそこそこに拾いつつその喫茶店へ歩き始めた。

 通りかかった観光客から「偉いわね」と褒められた時ににこやか笑顔で返した終野は、大きな建物の前で足を止めたのだ。

 一階建てで、四角い窓が壁に何枚も並んでいた。ガラス張りのドアは閉まっており、ドアノブに『貸し切り』の札がかかっている。

 そこから右側へと回ると、大きなガラスの壁で区切られていた。営業中なら、ここはオープンテラスになっていただろう。

 しかしプライバシー保護なのか、そのガラスはくもりガラスになっていたのだ。それには花とか、草木の模様が描かれており、目隠しだけでなく、喫茶店のお洒落な雰囲気をさら表現していた。

「だれかな~?」

 左側へと戻り、目に着いた窓を覗いてみる。カーテンが閉められていたが、どうにか中の様子を見れた。

「…藍ちゃん!?」

 目に映った『藍ちゃん』に、終野は悲鳴を上げた。

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