第94話 傷つける友人、助ける他人 その㉜

 弁護士が家に来た後、終野の両親は弁護士と一緒に結の家へ謝罪へ行った。

 結の父親は本社の部長をしているのもあり、まず真っ先に向かったのだ。

 家には結だけでなく、父親も帰っていた。玄関で土下座して必死に謝る終野の両親へ、結の父親は「娘は気にしていないから」と許したのだ。

 慰謝料が入った厚い封筒を差し出したが、結の父親は治療費の分だけ受け取った。念のため医者に見せたところ、結の怪我は骨に異常はなかったからだ。

 予想外の寛大な処置に、終野の両親はますます恐縮した。こんな立派な方だから、娘さんもあんな素晴らしい子に育ったのだろう、と。  


 その後、杉村の家へ行った終野の両親は、自分の娘が友人である『藍ちゃん』を苦しめていた事に謝罪した。

 杉村の両親は「今日初めて、成宮家のお嬢様達から知らされた」と言った。まさか、一番仲が良いと思っていた友人が、自分の娘をあそこまで苦しめていたとは思ってなかったのだ。

 さらに華は、喫茶店へ入る前に弁護士まで呼んでいた。もし、ここまで話しても信じてもらえなかったら、華の方で法的処置を取るためだ。

 しかし、結からの説明で、杉村の両親はもう娘の苦しみを分かっていた。それで徹底的に終野から守るために弁護士から接近禁止命令を出してもらう事を許可したのだ。

 そこまで聞かされた終野の両親は、もう『藍ちゃん』には近づけさせないほうがいい、と判断した。そこまでされたのなら、向こうは疎遠になることを望んでいる、と思わされたから。

 小学生の頃、寂しい思いをさせてしまった罪悪感から、待遇が良い成宮グループの会社へ転職できたのもあって中学生になった娘のおねだりを何でも聞いてきた。

 その結果、友人を苦しめたうえ、逆恨みで社長の姪を攻撃して怪我させてしまったのだ。

 これからは、少しでも早く自分達の娘が更生できるように支えよう。

 それで、学校から提案された『特別室での個人授業』と『カウンセリングを受ける』事を娘へ勧めたのだった。

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