第93話 傷つける友人、助ける他人 その㉛
「ホント、成宮さんは凄いよなー」
流は早速ニコニコ顔で、カツサンドを食べている。左手の大きな皿には、サラダにフライドポテトなどの料理がフォークと共にのせられていた。
「…本当に、タダでいいんだよな?」
コーラを飲む前に、満が疑問の声を出した。まだ料理に手を付けておらず、流の隣で壁際に立っている。
一昨日、教室で華からこのパーティーへ招待されたのだ。成宮グループが経営する、この喫茶店を貸し切っての立食式のプチパーティー。しかもタダで食べ放題飲み放題!とくれば、根室以外の同級生達は全員、すぐ『参加する!』と宣言したのだ。
根室が参加しなかった理由は「金持ちだと見せつけているから」らしいが、皆は別に構わなかった。楽しいパーティーに嫌味を持ち込まれたくないからだ。
「成宮さんも、昨日から『遠慮しなくていい』と言っていただろうー!楽しまなきゃソン!だぜ!!」
カツサンドを食べ終えた流が、皿の上にあるフライドポテトを一口かじる。
「まあ、そうだけど」
コーラを一気に半分近く飲んだ満は、喫茶店の中を見回した。
他の同級生の服装は、自分達と同じ『友人の家へ遊びに 来た』という格好だ。満は青系のGジャンにGパン、中は白の長袖のTシャツという格好だった。
流は茶色のジャケットに、それに合わせたしわの無い長ズボン。中に着ている白いシャツも、バッチリ決まっている。
他の男子はパーカーとか、結構ラフな服装だ。笑顔で料理を食べたりしながら、このパーティーを楽しんでいる。
それに対し女子は、友人同士のお出かけでも気を抜かない!けど、周りから浮かないように気を付けている、という感じのお洒落な服装だ。
華はシンプルなピンクのワンピースだが、さり気につけたアクセサリーが華の華やかさをさらに引き立てている。
華は主催者であり、そしてこのプチパーティーの主役でもある、と周りへ伝えるみたいに。
華から少し離れていた結は、水色のワンピースを着ていた。カップに入れたスープを飲んでいた結の髪には、明るい色の水引で作られたヘアピンが付けられていたのだ。
(霧島も、アクセサリーを付けるんだな)
学校では何も付けてなかったので、満はちょっと驚いていた。
土曜日も、日曜日も終野は朝からボランティア活動をさせられていた。
これは学校側から、命じられたことだ。昨日は幸澤市のシンボルである幸竜山でのゴミ拾い。そして今日は街中で朝から道端とかのゴミ拾いだ。
「…なんで、こんな事をしなくちゃいけないのよ」
何回も漏らした終野の泣き言を、聞いてくれる者はいない。
他にもボランティア活動をしている者はいるが、皆一生懸命、黙々とゴミを拾っている。
「…藍ちゃんと遊びに行っているはずなのに」
お洒落とは無縁の、動きやすい恰好で歩きまわされている終野は、なぜこうなったのか思い出し始めた。
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