第92話 傷つける友人、助ける他人 その㉚

 終野から解放された後に迎えた土曜日は、つい昼近くまで寝坊してしまった。

 休みの日も、朝食を食べ終えた後に家まで迎えに来ては夕方まで終野の都合に振り回されていたのだ。買い物だったり、見たくない内容の映画にも付き合わされていた。

 だけど、今度からは自由に時間が使える!何もしてもいいし、無理に外出しなくていい!

 改めてそう感じた杉村は、今日の予定を考え始めた。そして、まずやりたい事を決めたのだった。


 食事をした後、杉村は母親と一緒に大きな荷物を持って出かけた。

 行先は町中にある古着屋だ。まず、そこで服を買い替え

ようとしたのだ。

 今まで終野から双子コーデを強制され、可愛いワンピースなど着せられた。だが、杉村はシンプルな、動きやすいデザインが好きなのだ。

 クローゼットの中にあった、まだ着られる服は全部古着屋に売った。それで得たお金で、店の中にあった着たい服を何着か購入したのだ。

 杉村の母親は、数日前の喫茶店で結達から説明を受けるまで、終野の話を信じてお揃いの服を買っていた。しかし、今楽しい顔で服を選んでいる娘を見て、なぜもっと早く気づかなかったのだろう、と後悔してしまったのだ。

 支払いが済み、長袖のトレーナーと袖なしベスト、短パンにスニーカーで両手に買った服が入っている娘が笑顔で駆け寄ってきたのを見て、これからは娘の話をよく聞こうと決心したのだった。


 次の日、日曜日の昼にとある喫茶店でちょっとしたパーティーが開かれていた。

 高校生同士が気軽に楽しめる集まり、という感じだが、それのためにこの喫茶店は朝から貸し切りとなっていたのだ。

 店の中にはいくつも大きなテーブルが置かれ、その上にいろんな料理が並べられている。バイキングみたいに、好きな食べ物を好きなだけ取れるように。

 さらに飲み物もジュースからお茶まであり、これらもドリンクバーみたいに飲み放題となっていた。お菓子もたくさん種類があって選び放題だ。

「みんな、楽しんでいって!」

 このプチパーティ―を主催した華へ、同級生達は歓声を上げ、料理にお喋りと夢中になり始めた。

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