第88話 傷つける友人、助ける他人 その㉖

「おはよう!」

 教室のドアを開けながら、入学してから言いたかった朝の挨拶を元気よく言う。

「おはよう!杉村さん!」

 最初に答えてくれたのは、教室の真ん中で同級生達とお喋りしていた華だ。

「杉村さん、もう大丈夫!?」

「昨日は大変だったね!」

 華と一緒にいた他の女生徒達も、一緒に声をかけてくれる。それが、心から本当に嬉しかった。 

「あれ、杉村さん、髪切ったの!?」

 華の右側にいた女生徒が、気づいたのかそう言ってきた。

「うん!前から短くしたかったから!」

 杉村は、長かった髪をバッサリ切っていたのだ。リボンの髪飾りはなく、代わりに銀色のヘアピンを付けていた。

「昨日、うちが経営する美容院で切ってもらったの!杉村さん、すごく似合っているわ!」

 喫茶店での話し合いの後、華は近くにあった成宮グループの美容院まで連れて行ったのだ。杉村が「髪を切りたい」と言ったからだ。

 今までは終野からしつこく「似合ってないから切っちゃダメ!」と言われ続け、休みの日にも髪を切りに行くことすら出来なかった。

 だが、今はもう自由になったから、いつでも好きな髪型もできる!

 髪型を褒められ、ますます笑顔になった杉村を見て、自分の席で座っていた結は、一安心したのだった。

「成宮さんが、杉村さんを助けてくれたんだって!」

「さすが天下の成宮グループのお嬢様だな!成宮家は日頃から慈善活動もしているもんな!」

 他の同級生達も、華が杉村を救った事を褒めたたえていた。


「杉村、ようやく解放されたみたいだな」

 少し離れた場所の自分の席に座っていた流も、元気になった杉村を見て安心していた。

「ああ」

 満も、同じく(本当に良かった)と思った。

「…本っ当に、終野はしつこかったからなあ…」

 思わず頭を抱えながら、流がもらす。満も、その時の状況を思い出しながら頷いていた。

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