第87話 傷つける友人、助ける他人 その㉕
久しぶりに、朝までよく眠れた。
杉村は自室のベッドの中で、すっきりとした目覚めをした。
ベッドから出て、机の上に置いてあるスマホを見てみる。
昨日まで朝早くから夜寝るまで、何通も来ていたラインは一通もなかった。
それを見て杉村は、固くなっていたになっていた体から緊張が抜けたのを感じた。ようやく、終野から解放されたのだ。
そうなったのは、昨日の夕方、華と結が杉村の両親を説得してくれたおかげだ。華は、病院の診断書まで見せて杉村が心身共に酷い状態だと説明したのだ。
社長令嬢からの説明とはいえ、初めは信じられなかった両親だったが、その時に学校側からも説明があったことと、結からの丁寧でかつ杉村の心情を代弁した話し方で、ようやく自分たちの娘が酷い思いをしていた、と認めてくれたのだ。
さらに終野が、杉村を助けた結を逆恨みで怪我をさせたと知って『このまま友人付き合いさせないほうがいい』という華の助言を受け入れた。
それで華が呼んだ弁護士を通じて、接近禁止命令を出したのだ。
さらに連絡も禁止にしたため、もうラインで気が重くならなくていい。そう思うと、安心してスマホに触れたのだ。
軽くなった頭に触れながら、杉村は久しぶりに学校へ行くのが楽しくなった。
白いスニーカーを履いて歩く通学路は、昨日と違って何もかも明るく見えた。
朝から一方的に話を聞かされなくていい。自分が行きたい道を、思うように歩ける。それがどんなに楽しいことか。
さらに学校に着いても、前からやりたかったことができる。他の同級生達とお喋りができるなんて、なんて嬉しいことだろう。
入学して以来、ようやく望んでいた学校生活が送れる。
明るい笑顔を浮かべながら、杉村は玄関の靴箱へお気に入りの白いスニーカーを入れた。
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