第83話 傷つける友人、助ける他人 その㉑

「それにしても、本当にラッキーだったわ!杉村さんのご両親が、うちの系列の会社の社員だったなんて」

 駐車場を出た時、華が明るい顔で言った。そのおかげでこんなに早く話し合いができるようになったからだ。

 さらにこのビルは、成宮グループの系列の会社の一つだ。そして一階の喫茶店も、同じく成宮グループが経営しているので、華達は繁盛している喫茶店へ入っても予約席を案内されたため、すんなり座れたのだ。

 席に着いた華達は、飲み物を注文して少し待つ。店の真ん中の、六人座れる席だったので、結達は一列に並んで座っていた。

 上から見ると、結、華、杉村の順で座っていた。向かい側には、同じく一人ずつ座れる椅子が三脚並んでいる。

 杉村は緊張していたが、華はとても慣れたようすだ。結は、テーブルに置かれたお冷を数口飲み始めた。

 それから、思ったより早く藍色のカフェの制服を着たウエイトレスが、華達が注文した飲み物を運んできた。

 シンプルなデザインのカップに入っている紅茶を華達のテーブルへ丁寧に並べていく。

「先にいただきましょう」

 華は手慣れた、それでいて優雅な仕草で紅茶へミルクと砂糖を入れ始める。結は、白い砂糖をスプーンで二杯入れた。

 杉村は少し悩んだが、ミルクを多めに入れる。そして砂糖を一杯だけ入れ、覚悟を決めた顔で飲んだのだ。

「…美味しい!」

 終野と一緒に飲む時は、いつもカフォオレしか飲めなかった。終野がいつも勝手に注文してしまうからだ。

 お小遣いは限られているため、追加で好きな飲み物を飲めなかった。今日は、久しぶりに自分の意志で、飲みたい物を飲めたのだ。

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