第82話 傷つける友人、助ける他人 その⑳
終野が職員室へ呼ばれた時、華は玄関でスマホを使っていた。
「杉村さん、もうすべて終わったから病院を出たって。これから杉村さんと一緒に、ご両親へ会いにいくわよ!」
スマホを制服のポケットへ仕舞いながら、華は結へそう伝える。先に靴を履き替えていた結は頷くと、自分と杉村の学生鞄を持って華と共に歩き出した。
校門を出ると、一台の高級車が近くで停車していた。それを見た華と結は、速足で近づいていく。
高級車から出てきた運転手が、慣れた手つきでドアを開ける。その中へ、華だけでなく結も乗っていったのだ。
「…あれ、霧島と成宮じゃないか?」
玄関で靴を取り出そうとした満は、校門の方を見た時にそう口にした。
「珍しいな、霧島まで乗り込むなんて」
結はいつも歩いて通学しているのは、流も知っていた。だから今、結が一緒に華の迎えの車に乗り込むのは珍しいのだ。
「もしかしたら、杉村の事に関係あるかもしれないな」
昼休み、華も杉村へ会いに行った事は満も気づいていた。
「成宮さんが関わったのなら、杉村はもう大丈夫だな。成宮さんなら、もし杉村が困っていたらなら絶対助けるだろうし」
「ああ」
確信している流に、満も同意したのだった。
華と結を乗せた高級車は、街中のある大きなビルの駐車場で止まった。
先に出てきた運転手がドアを開けると、華と結、そして制服姿の杉村がややおぼつかない足取りで出てきたのだ。
「杉村さん、歩けますか?」
よろけそうな杉村を見て、結は声をかける。
「…うん、大丈夫。点滴のおかげで少し楽になったから」
結を安心させるために、杉村は微笑んだ。
「ご両親は、一階の喫茶店まで来てくれるそうよ。私達も行きましょう」
華が先導して歩き始める。その後を結と杉村が着いて行った。
「…すごいね。こんな立派な車、初めて乗った」
「ええ。私も何回か乗せてもらいましたが、乗り心地はすごくいいですよ」
和ませるように言った結へ、杉村は笑う。久しぶりに心から笑った気がした。
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