第81話 傷つける友人、助ける他人 その⑲

「…先生も大変ですね」

 流が、ふとそう呟く。

「まあ、いろんな生徒がいるからね。あなた達みたいな優しい子もいるし」

 保健室の先生は、流と満を見て微笑む。この二人は、杉村を心配してきたと気づいたからだ。

「あなた達、お昼はどうしたの?」

「大丈夫です!早くサッカーやりたいので、早食いしました!」

「そう?でも消化が悪くなるから、ご飯はゆっくりよく噛んで食べてね」 

「はーい!」

 明るく流が答えると、満と共に運動場へ走っていった。

 あの二人は、杉村が心配だったからここまで来てくれたのだろう。そのために昼食を大急ぎで食べてきたのだ。

 杉村を運んできたあの女生徒達も、杉村を心配していた。しかも、あの女生徒達は、ちゃんと杉村を気遣っていたのだ。

(これから、あの子はこの状況から抜け出せるかもしれないわね…)

 保健室の先生の予想が当たったのは、この後もう一人の女生徒が結達と一緒にやって来た後だった。



 終野が自分の鞄の蓋を閉めた後、思わぬ事態になっていた事に気づいた。

 杉村の鞄が、見当たらなったのだ。確か、掃除へ行く前にはあったはずなのに。

 教室中を探していると、春山先生が呼びに来た。何でもとても大事な話がある、と。

 渋々職員室へ行った終野は、そこで耳を疑う話を聞かされたのだった。

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