第78話 傷つける友人、助ける他人 その⑯

「…うん」

 話し終えた後の杉村は、長い間抱えていた深刻な悩みを吐き出せた顔になっていた。

「ご両親は、何も言わなかったの?」

 ここまで疲れていたら、親が気づくかもしれない。安田は、そう聞いてみたが、

「…終野さんは、周りに取り入るのが意外と上手いの。うちの親も『茶奈ちゃんはすごくいい子だから、友達として大事にしなさい』って言っているくらいに」

 『茶奈』とは、終野の名前だ。ちなみに、杉村の名前は『藍』である。

「…そうなんだ」

 杉村が心身共に疲労していたのは、周りが分かってくれなかったのもあるだろう。執着されて酷い思いしているのに、周りには『いつも仲良しな友人』と思われていたから。

 安田が心配な顔をした後、華は何か考え込んでいた。

 そして目を開けると、杉村の手を取り、しっかりと掴んだのだ。

「杉村さん!私にまかせて!!パパに頼んで、杉村さんを助けて見せるわ!!」

 明るい顔でそう宣言した華に、杉村だけでなく安田と保健室の先生も驚いた。

「…助けるって、そんな事できるの?」

 嬉しさより、戸惑いと驚きが先に出てしまった杉村へ、華は自信に満ちた声で答える。

「もちろんよ!我が成宮グループの力で、杉村さんの学園生活をバラ色へと変えてみせるわよ!!」

『灰色を通り越して、もはや真っ暗になっていた杉村の人生を助け出す!』

『成宮グループの権力と財力は、困っている人を救うためにある!』

 そう主張するように、華はものすごくやる気に満ちていた。すぐスマホを取り出すと、父親に電話したのだ。

「杉村さん、華さんも力を貸してくれますから、これからもう一人で悩まなくてもいいのですよ」

 少しかがんで、目線を合わせた結が、優しい顔でそう声をかけた後、緊張の糸が切れたように杉村の目からどんどん涙が零れ始めた。

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